診察って何? 聴診器って何をしているの?
ドクターズファイル
「医者って、ちょっと診てもらったら、ぱぱっと病気がわかって、どうなるかがわかって、さっと薬を出してくれる。」そんなイメージで思われている方が意外と多いようです。でも学生の時に習いました。優秀な医者かどうかはどれだけたくさんの可能性を思い浮かべることができるかによって決まってくるのだと。診察というのは、目と耳と鼻と手と経験や知識が入った脳とで行います。たくさんの可能性をイメージし、ひとつひとつ消去していく作業をしているのです。短い診察の時間の中で、ものすごくたくさんのことを考えているのですよ。診察の際に最も役に立つのは、みなさんが問診票に書いてくださっている症状や経過、その他周辺の状況です。詳しく書いてくださっている問診はそれだけで病気の絞り込みがかなりでき、本当に助かります。そして次に診察によって様々な情報を集めていきます。診察で集める情報は簡単に手に入るものばかりではなく、山の中で遠くの方にかすかに聞こえる水の流れる音を聞き取るように、五感すべてを研ぎ澄ましていなければ得られない情報もたくさんあるのです。ですから診察の際はできるだけよい姿勢で(診察は体の中をイメージしながら行いますが、よい姿勢だとイメージがしやすいのです。)できるだけ静かに受けていただけるようお願いします(もちろん小さいこの場合は仕方がありませんので、機嫌よく診察が受けれることを最優先に考えていただければ構いません)。よくテレビドラマなどでは聴診器を当てながら愛想よくしゃべっている医師が映りますが、しゃべりながらなんていうのは実際には不可能なのです。ほんとにいい加減に診察している姿にしか映りません。
このように診察を行っているのですが、実は1回の診察で病名や今後の病状経過がピンポイントでわかることはそれほど多くはありません。少し症状の経過を見なければ診断がつかない病気がたくさんあるからです。そういうわけでいくつかの可能性を残したまま少し経過を見ることもあります。でも安心してください。その場合、すぐに対応しなければならない重篤な病気でないかどうかはしっかりと見極めたうえでの判断ですから。万一想定された可能性の中に重篤なものがあった場合には初診の段階でも血液検査やレントゲンを行っていきます。そして「明日もう一度診せてください」とか「2日後に・・・」とか言われた場合は、まだ確定診断には至らない状態なのですが、でもそれは1日様子をみても大丈夫だということでもありますので心配しなくても大丈夫です。そして必ず診せていただくことをお願いします。
「風邪ぐらいだったら、簡単に診断がつく。」と思われている方も多いようですが、風邪という診断は他の重篤な病気をすべて除外した上での診断ですので風邪と言い切るのも結構難しいものなのです。