5歳児健診について
ドクターズファイル
まもなくこの地域でも5歳児健診が始まります。そこで今回は、なぜ5歳児健診をするのか?どういう意味があるのか?について勉強してみたいと思います。
子どもは生まれた時点で、すべて同じというわけではなく、すでに違う個性と能力を持っています。(だから子育てって楽しいんですよね。)子どもが生まれる前には「こんな子に育てたい。」とか「こういう風に育てたい。」とかって思っていたと思います。それが知らず知らずのうちに、親子のぶつかり合いを繰り返していくうちに、それぞれの個性に合わせた子育てになっていくんですね。ところが時に、子育ての途中でとまどったり、どう関わったらいいのかわからなくなって悩むことが起きてきます。ちょっとした工夫をすればうまくいくことが多いんだけど、そのアイデアが思いつかずに、ただただうまくいかない関わりを続けてしまって、どんどん苦しみを深くしていくことがあります。そして子ども自身も、叱られて叱られて自信を失ったり、消極的になってしまったり、反抗的になったり、自分はダメな子なんだと思ってしまうことすらあるのです。
実は子育てにこうしたちょっとした工夫を必要とする子どもたちというのはかなりの割合いて、早くにそうしたことがわかれば、子育ての苦しみが減り、子どもも発達的にも心理的にもよい成長を遂げるということがわかってきています。今は健診といえば乳児健診、1歳半健診、3歳児健診が行われていますが、3歳を過ぎてから、もしくは集団参加をしてからでないと見えにくい特徴があり、そういうものをみるために5歳児健診が行われるのです。具体的にどういうことをみるのかというと、全部は書ききれないのですが、一つは「社会性の発達」です。社会性の力とは、状況をみる力や、相手の気持ちや意図に気づく力、重要なことと些細なことを区別する力、共感性などです。大人でも気の利く人と気の利かない人がいると思いますが、これは持って生まれた能力に起因するところが大きいのです。そしてもし仮に気づきの弱いものを持って生まれてきた人であったとしても、幼児期から状況や人の気持ちについて教えるなど、社会性を伸ばすことを意図したかかわりを行なっていけば、よく気の利く子に育てることができるのです。また一つは学習を始める前に身につけておくべき力の発達です。小学校に入ると、読み・書き・計算が始まりますが、それ以前に、聞く力・話す力・数の概念・音を文字に変えるために必要な音韻分解の力などが必要で、そこに弱さがあると小学校に入って読み書きなどでつまずくことがあります。小学校に上がる前にそういうことがわかっていれば勉強でいきなりつまずくことはなくなるかもしれません。その他にも、コミュニケーション力や認知力、行動コントロールの力、注意力など、いろんなことを5歳児健診でみていきます。 健診というと、「なんか言われたらいやだ」とか「発達障害のレッテルを張られるのではないか」とか思って敬遠される人もいるかもしれませんが、子どもたちのより良い成長のために、とても有益なものであるということ、そして何よりも、弱さを発見するのが目的ではなく対応の仕方を知っていただくことが目的であるということを理解していただければと思います。