夜尿症について
ドクターズファイル
幼児期に、夜おもらしをすることを「おねしょ」と言いますが、5~6歳を過ぎてもおねしょをすることを「夜尿症」と言います。夜尿症は6歳児の10~20%、小学校高学年では約5%にみられます。幼児期にみられるおねしょは、発達途上にみられる生理的なもので心配のないものが多いのです。しかし、小学生になってもみられる夜尿の中には、夜間に尿を濃縮して尿量を少なくするホルモン(抗利尿ホルモン)の分泌が低下していたり、排尿機能の未熟性があったり、膀胱が小さくておしっこを十分にためられなかったりなどの問題が関係していることがあり、また何らかの神経疾患が潜んでいたりすることもあり、治療が必要となる場合があります。
さらに10歳を過ぎても夜尿が持続している子の10人に1人は高校生になっても持続しているという統計がありますが、大きくなるにつれて夜尿があるということだけでも子どもにとっては大きなストレスになってしまいます。お泊りの際の不安、親からの叱責などで自尊心が低下してしまう子も多いようです。そこで、できればそうなる前に治してあげたほうがよいと思うのですが、どのタイミングで受診をするかというのはなかなか難しいことだと思います。気をつけていただきたいのは、この時期、自然学校の直前になって受診されるケースを散見しますが、やはりきちっと治して安心できる状態で自然学校に行かせてあげたいと思われるなら、1年前、すなわち4年生になったぐらいの時期に受診されることをお勧めします。やはり完治するには時間がかかるからです。ただ理想的には、1年生になったぐらいの時期に一度受診をして早急な治療を必要とする問題がないかどうかや、今後の見通しだけでも知ってもらって(夜尿のタイプによって治りにくいものや治りやすいものが存在します)、その時点で治療を開始してもよいですし、2~3年の間、生活の中でできる範囲の努力、対応をしながら様子を見て、4年生になっても治らなかった場合に再度受診をするということでもよいと思います。
生活習慣に関して最近特に気になることは、学校ではほとんどトイレに行かず、1日の排尿回数が2~3回という子がとても多くなっているということです。日中にしっかり水分を取って排尿しておかないと夜尿が増えるという結果になってしまいます。一度お子さんの一日の排尿回数、確かめてみてはいかがでしょうか。そのほか、夜尿症に対する一般的な生活上の注意点としては、夜は起こさないということ、就眠前にゆっくり入浴させるなどの冷えに対する対応、怒ったりして精神的ストレスを与えないこと、などがあります。またオムツをやめてパンツにしたら早く治るんではないかと思われる方が多いようですが、統計的にはオムツを早くはずしたグループとそうでないグループで治るまでの期間は変わらなかったという結果が出ています。やはり、「起こさず」「あせらず」「怒らず」の3原則を守ってゆったりとみてあげるのがよいでしょう。子どもにしてみたら、寝ていて意識がない時にやってしまうのですから、どんなに頑張ろうと思っても仕方がないのです。