肺炎球菌について
ドクターズファイル
乳児の細菌性髄膜炎は、年長児の髄膜炎にみられる発熱や頭痛、嘔吐などの症状がみられないことが多く、不機嫌だけが唯一の症状であったりするため、大変診断が難しい病気の一つです。そのうえHib(ヒブ)の髄膜炎は5歳前後でみられなくなりますが、肺炎球菌による髄膜炎は5歳以降まで発症することがあり、現在でも予後不良な病気で、死亡率は5%、発達障害や麻痺などの後遺症は20%にみられます。多くの場合、肺炎球菌は集団保育への参加を契機に喉に保菌をすることになります。肺炎球菌を保菌したら必ず髄膜炎を起こすわけではありませんが、予防することが重要な病気の一つです。しかも近年は抗生物質の不必要な使用に伴い、耐性菌の増加が問題になっています。20年前は抗生物質が効かない耐性菌は10%以下でしたが、近年は80%が耐性菌であるといわれています。診断が難しいうえに耐性菌によって治療も難しくなっている現在、ワクチンで予防することが大変重要なのです。母から受け継いだ肺炎球菌に対する免疫は生後2ヶ月を過ぎると急速に低下します。そのため生後2ヶ月を過ぎると肺炎球菌ワクチンを接種し、髄膜炎を起こさないだけの抗体を作ることが必要です。できれば集団保育に参加する前に、決められた間隔で決められた回数接種し、高い抗体価を維持することが望まれます。ちなみに日本は先進国の中では最もワクチン接種率の低い国になっておりますが、アメリカでは2000年に肺炎球菌ワクチンを定期接種ワクチンとして指定し、7年間で100%近いところまで肺炎球菌による髄膜炎を抑え込むことに成功しているのです。